『丁場紀行』ギリシャ丁場紀行 後編 No.11-1
今回で『丁場紀行』11回目の発信です。
前回は『ギリシャ丁場紀行 前編(2023年5月出張編)』を案内しましたがいかがでしたか?皆様からは、冒頭で紹介した『中国ビザ取得が役に立った。』とか『やたらと料理の写真が多かったね。』とかのお声を頂きました。
今回は『ギリシャ丁場紀行 後編』を案内しますが、前回紹介出来なかったギリシャ大理石を紹介します。
また毎回料理写真を紹介していますが、ギリシャ料理の写真は前回で尽きたので、今回は『ギリシャといえば遺跡。その材料は大理石。そんな遺跡に触れないギリシャ紀行は有り得ない。』の精神で、前回紹介したパルテノン神殿以外に今までに丁場視察時の移動途中で訪問した遺跡7ケ所を紹介します。
◆ギリシャ産(北マケドニア産も記載)大理石の丁場位置を紹介します。
【赤文字石種は、今回の丁場紀行で紹介します】
【紫文字は、今回紹介する遺跡です】
【黒文字石種は、前回の丁場紀行で紹介済みです】
■まずは、前回紹介出来なかったギリシャ産大理石の紹介です。
❶レヴァディアブラック :
丁場はアテネ市から北西に約100km(車で約2時間)のレヴァディア市近郊に位置します。
1983年から採掘開始し、歴史的には比較的古くから流通している石種でギリシャ産黒大理石の代表格です。私は2018年5月に丁場訪問しています。以前は2社が採掘していましたが、現在は1社だけが採掘しています。黒地にくすんだ白(薄いグレーっぽい白)が全体的に入り、石質は硬質で艶乗りが良い黒大理石です。
❷グリジオゴルティナ :
丁場はクレタ島のエクラリオン空港から南に約60km(車で約80分)のゴルティナ市近郊に位置します。
色柄はライトグレー地にほどよく白柄が混入し、石質は硬質で艶乗りが良いグレー大理石です。この丁場からは、入口がら向かって左側がダーク、右側がライトに分かれており、当社はライトタイプに白柄が適度に混入するタイプを指定しています。
この丁場は1955年から採掘開始し現在に至っているが、ゴルティナではローマ時代からこのグレーゴルティナとクレタ島産のライムストーンを採掘し使用していたそうで、ライムストーンにおいては当時(ローマ時代)からトンネル掘りをしており、第2次世界大戦では、ナチスが倉庫に使用していたとの事。現在はその丁場は閉鎖していて見ることが出来ません。
◆我々には馴染みの薄いクレタ島について簡単に説明しておきます。クレタ島はギリシャ共和国南方の地中海に浮かぶギリシャ最大の島。古代ミノア文明(紀元前3,000年頃から紀元前1,400年頃まで)が栄えた土地でクノッソス宮殿をはじめとする多くの遺跡を持ちます。位置的にはギリシャ本土から約160km、アテネ空港からエクラリオン空港までは約50分のフライト。クレタ島の面積は8,336km2(広島県に相当)、形状は東西の長さが260km、南北の幅の広いところで約60km、狭い所で約⒓kmの東西に細長い島です。
ギリシャ最大の島ですが、地中海ではシチリア島、サルディーナ島、キプロス島、コルシカ島に次いで5番目に大きな島です。
❸エーゲアンクリーム :
丁場は東マケドニア トラキア地方のドラマ市内から山道を約10km(車で約40分)のボラカス村に位置します。
白地にクリーム柄(現地ではゴールドと称している)が全体的に斜めに流れる暖かみのある石種です。非常に大きな丁場のほんの一部だけで採掘される希少柄です。2012年丁場視察した時に偶然出会い、従来の白系大理石にはない風合いだったのでトライアルで購入し現在も扱っている石種です。
❹レイアホワイト :
丁場は東マケドニア トラキア地方のドラマ市から山道を約10km(車で約30~40分)のピルギ村に位置します。
前回紹介したアヤックス丁場とは約10km離れています。採掘開始はアヤックスと同時期の1995年頃から開始、本格的な採掘は中国の膨大は需要により2010年からです。
当初、当社に紹介された石種名は『ニューホワイト』でしたが余りにも芸がないので、当社独自に『レイアホワイト』と命名しました。レイアとはギリシャ神話の『山の女神』です。
単独の大理石丁場での採掘量は世界ナンバーワンであり、ピーク時は年間200,000トン(約60,000m3)です。地色は白地ですが、採掘量が莫大なだけに柄のバリエーションが多く、ウネリ柄、平行ウネリ柄、アラベスカート柄、また柄が少ないタイプ等がありますが当社は平行ウネリ柄を指定しています。
❺新石種 トリトンブルー :
現在のアヤックス丁場(ボラカス村)から約60km離れた、ニキシャニ村に位置します。
本家本元アヤックス丁場(現在は丁場閉鎖)の近くです。長らく休止していた丁場を現オーナーが買い取り2018年に再開したそうです。2023年5月出張時のアテネに向かう道中に視察出来るとの事なので訪問しました。丁場での名称は『ニューアヤックス』。本家本元の丁場に近くからだそうです。
丁場での整形された原石を見ると、本家本元アヤックスに近い色柄やゴールド系ラインが入るタイプもあり、私は白地にブルーグレーラインのタイプと白地にブルーグレーライン&ゴールド系ラインが混入するタイプが魅力的だと感じました。まだ丁場は5段目で表層に近い部分しか進んでいないのでキズが多いのですが、部分的に良材が採れており、将来的には期待出来そうなのでその場で600角の見本を依頼しました。
入荷した見本を社内で検討し、2コンテナ(約12m3)トライアル発注しました。2024年1月に入荷します。石種名は、現地名のニューアヤックスでは現アヤックスのイメージになってしまうので、別名にしました。私がトリトンブルーと命名しましたが、評価はいかに?〔トリトン➡ギリシャ神話の『海の神』〕