『丁場紀行』イラン丁場紀行 2018年11月出張編 No.16-3

■11月12日(月): 今日は最大ミッションのレッドトラヴァーチン丁場の視察です。

タブリーズのホテルから丁場まで約70kmです。軽めの朝食を食べました。材料が良いので美味。

景色は期待薄ですが、レッドトラヴァーチンに期待して、さあ出発。

市街地の沿道に白大理石屋を発見。帯材や規格サイズを店頭販売しているように見えました。

市街地を抜けるとまたもや土漠の連続です。

1時間ほど走ると前方に赤っぽい小山が見えてきました。これがレッドトラヴァーチン丁場です。

 

『丁場紀行』イラン丁場紀行 2018年11月出張編 No.16-3

 

 

⑤ レッドトラヴァーチン : 日本では馴染みの深い赤いトラヴァーチン、通称『赤トラ』です。

当社は1970年代から扱い始め数々の工事に採用されました。

皆さん、見覚えがあるのは百貨店の『そごう』だと思います。

私が記憶している原石は比較的小さく、形状も悪かったのですが、丁場に着いて驚きの連続です。

まずは、丁場全体を見れる位置から見ましたが、丁場はヨーロッパ並みにワイヤーソーでのベンチカットで採掘し、形状は凄く良く、

全体的に6m3/個以上の大きい原石を産出していました。

訪問時は5層(1層=約8m)で採掘中。遠目で見ても上部1~3層は白っぽく赤味不足でNG、

レッドトラヴァーチンとして当社が調達し、工事に使用できるのは4層目と5層目と判断し、実際に採掘している4層目、5層目を確認しました。

もちろん現場に提出している見本と色柄の確認は必須です。

結果はベストの色柄は5層目で、今回の工場と在庫用で、丁場で4ブロック、ストックヤードで5ブロック、合計9ブロック(約50m3)を選出しました。

何が驚いたと言うと1層目、2層目には部分的にオニックス化していたことです。

トラヴァーチンとオニックスの関係は、復習になりますが下記に記載します。

 

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★トラヴァーチンのウンチクを『丁場紀行 No.6 トルコ丁場紀行 後編』で紹介しましたが復習しましょう。

トラヴァーチン(Travertine)は、温泉、鉱泉、地下水中から生じた緻密、多孔質など多様な構造を持つ石灰質化学沈殿岩です。

一言で言えば、トラヴァーチンは温泉沈殿物の一種で、温泉に溶け込んでいるカルシウム分が沈殿しできた軟弱で多孔質な物をトゥファ(tufa)と呼び、

そのトゥファが継続的な熱作用、圧力作用で硬質になった岩石です。

縞模様は季節によって沈殿の速さが異なり、層状の縞模様になったと考えられます。

 

また、さらに緻密で硬質な岩石となったのがオニックス(ONYX)なのです。

トラヴァーチンの穴は、熱水泉(冷泉)で形成される過程で水生植物、藻類、コケ類が表面に生えて、その上に石灰質が沈殿し、また生えて、また沈殿の連続で特徴的な多孔質(穴)となりました。

オニックスは、熱水泉の温度が高温過ぎて植物が成長できず、

多孔質でない緻密な岩石となってオニックスとなりました。

トラヴァーチンとオニックスは温泉から生まれた兄弟みたいな関係です。

世界各国のトラヴァーチンの丁場は温泉地近郊(or 古くは近郊であった)であり、オニックス化した層があったりします。

反対にオニックスの丁場にはオニックスになりきっていないトラヴァーチンが部分的に存在するのです。

また、トラヴァーチンは岩石の表面に直接堆積することがあり、それを石灰華段と称し、その代表が1985年にマイルドセブンのCMで有名になったトルコにある世界遺産のパムッカレです。

*参考に、イタリアのトラヴェルチーノロマーノはローマ近郊の温泉地であるティヴォリ(Tivoli)から産出されています。

*トラヴァーチンの語源は、現在でこそ、色々な国で産出されているが、古くはイタリア・ローマ近郊のティヴォリ産だけでした。ティブルは古代ローマ時代にティヴォリ付近に存在した都市国家の名前で、その時代にはトラヴァーチンは『LAPIS TIBURTINUS   (ラピス ティブルティヌス)』と呼ばれ、(LAPIS=ラテン語で石or鉱石、意味はティブルの石)それが変化してイタリア語でトラヴェルチーノ(TRAVERTINE)となり、英語読みでトラヴァーチンとなったとのことです。

 

レッドトラヴァーチン丁場視察、原石検品が無事に終了し、宿泊地ザンジャーンまで約350km(車で約6時間)の長距離ドライブでした。

 

■11月13日(火):昨夜はシャワー、夕食後は前半戦疲労のためバタンキューで寝ました。

今日は、ミッション2のシルバートラヴァーチン丁場の視察です。ザンジャーンのホテルから約400kmの長距離移動です。

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軽く朝食を食べて、いざ出発です。またまた同じような景色を4時間ほど走り、昼食をとることになりました。

日本でいう『道の駅』みたいな所に車を停めて、レストランに向かってセレクトは案内者にお任せしました。

ここでも野菜中心です。そろそろ肉が恋しくなっています。

『牛丼食べたいなあ~~~~~~~』、『焼き鳥食べたいなあ~~~~~~~』

 

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⑥ シルバートラヴァーチン : 以前からこの石の存在は知っており、気になっていたので、今回の出張で丁場視察を要請しました。

このエリア(カシャーン周辺)はトラヴァーチンの産地で、小山全体がトラヴァーチン(ベージュ系、グレー系、ライトブラウン系、シルバー系の色々)で、一番奥にシルバー系の丁場があり、今回はシルバー系の中でも一番良かった丁場(良かったというのは、訪問時は在庫過多により採掘休止していたため)を視察しました。

柄は大うねり、中うねり、小うねり、平行、斜め流れのように多くの流れパターンがあり、地色の変化も激しく、

また巣穴に茶、黄色混入が見受けられるため、原石購入はリスクが大きいので断念しました。

 

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◆シルバートラヴァーチンの丁場視察が無事に終了し、M氏の事務所兼ゲストハウス兼原石ヤードがあるエスファハーンまで約230kmのドライブです。

この間は、高速道路利用が多いので約3時間30分で移動できました。

エスファハーン近郊にストックヤード(数社の原石が保管されている原石置き場)があるので、下見に寄ってから今夜と明日の2泊するゲストハウスに向かいました。

到着後すぐにシャワーし、その後に夕食です。賄いのおばさんの手料理を振舞っていただき、非常に美味しい料理をご馳走になりました。

 

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■11月14日(水): 昨夜は写真整理し、メール処理しても早寝できました。そして早起きで5時に起床。朝食まで原石ヤードをブラブラと散歩。

朝食後に原石ヤードでまず、レッドトラヴァーチンの原石5ブロック、チタニウムトラヴァーチンの原石1ブロック選出しました。

ヤードには、見本等で見たことがあるが、原石では見たことがない石種が沢山あり、その中で今後期待できそうな新石種3種類を各1ブロックずつトライアルで購入することにしました。

 

・トライアル❶ オーロネーロ : 黒と茶色の礫岩です。クラシック風で高級感があったので、トライアルで1ブロック購入しました。

壁、床というよりもテーブルやカウンターの様な装飾的部位に推薦できる石種です。その後も引続き購入しています。

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・トライアル❷ グレースブラウン : ライトブラウン系で硬そうなので床に最適と思い1ブロック購入しました。

地色は、スペインのグリスピュルピス風で艶乗りが良い石種なので、その後も引続き購入しています。

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・トライアル❸ スワローブラック : 黒地に白柄ですが石質は硬いので、中国産『黒白根』の代替にできそうと思い1ブロック購入しました。

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◆せっかくなので、ゲストハウスでの14日朝食と夕食を紹介しておきます。

準備して頂いたパンは『バルバリー』という名称のパンで、この地方での主食のパンです。

捏ねあがったパン生地を平たく伸ばして、表面に重曹を溶かした水溶液を塗り、指で窪みを付けて焼き上げるパンです。

素朴で小麦粉自体の味を感じ非常に美味しかったです。

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